声に身を任せ、頭の中を空っぽにする。

幸運の記憶
嗚呼 唄うことは難しいことじゃない。
ただ声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ。
 
これは斉藤和義さんの『歌うたいのバラッド』という歌の冒頭の歌詞ですが。口ずさむたびに「ほんとうにそのとおりだなあ」と、何年経っても気づかされ、変わらぬ安心感を与えてくれるとても素敵な歌詞だなあと、いつもいつも感じさせてもらっています。
 
世の中にたくさんの歌があり、歌には歌詞がありますが、極々忘れっぽい私が、唯一忘れることのない歌詞が、この、嗚呼 唄うことは難しいことじゃない。ただ声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ。です。
 
私たちは日々いろいろなことを想起しながら生きていますが、忘れないということは思い出しやすいということである、というふうに私は思っていまして。思い出しやすいもの、思い出しやすいことには、なにかそれなりの真実があるように感じられます。
何度覚えても、覚え直しても、思い出せないようなことはきっと忘れていてもいいことで、必要になった時に必要になった分だけ拝借する、そんな感じで良いような気がするのです。
 
だから、いろいろな歌を練習の一環として歌わせていただきますが、多くは謹んでお借りして歌っているという感覚があります。
ただ、そのような中に、この言葉は、このメロディは、お借りしているというよりも、まるで自分から湧いて出てきた言葉のように、まるで自分の頭の上の天から降りてきてくれたメロディのように、気づかされ、感じさせられながら歌える歌、フレーズというものがあります。
それは自分に特別に与えられた言葉やメロディであるような気がしながらそれだけではなく、全てが繋がっている大きな意識に触れている自分自身を発見するようなものです。
私のものでもあり、あなたのものでもある。
それが、思い出しやすい、ということなのだと思います。
 
私は日頃、歌うこと自体を瞑想をすることと同じように感じています。
祈りという言葉を用いることもありますし、歌う前の準備(たとえばヴォイストレーニングなどを)を禊というふうに喩えることもあります。
瞑想や祈り、禊などと言葉を並べると、少し大袈裟に感じられることもあるかもしれません。
だから、この歌詞です。何度も繰り返しますが、嗚呼 唄うことは難しいことじゃない。ただ声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ。
これはまさに瞑想であり、今で謂うマインドフルネスですよね。
 
私が歌うことや歌う前の準備に、人生の中でたくさんの時間を注ぐのも、ただ今を生きたいだけ、思い出したいことを思い出したいだけ、ということなのでしょう。
私にとって最大の喜び、それは想起すること。つまり、かつての記憶を思い出すこと。
それはもしかしたら、今生だけではなく来世や過去生のことも思い出すことなのかもしれません。
 
 
8月のレッスンカレンダーは以下の通りです。
9月のレッスンカレンダーは8月の20日前後に更新されます。
この夏もどうぞよろしくお願いいたします。