春の嵐がやってきた。

第一子の妊娠と出産から三年の歳月をかけて作った曲『春の嵐』をご紹介させていただきます。
不調の中のレコーディングでしたが、今でしか封じ込められない想いを歌に託しました。

この歌はもともと、恋の詩を書いていたつもりだったのですが、今はなんど聴いても新しい生命の訪れを祝う詩に聴こえてきます。
長い時間をかけて、また長い時間がかかってできあがった歌には、往々にしてこういう嬉しい出来事が訪れます。
ひらひらと空を舞う蝶々を掴んだ!と喜んで作りはじめたときの感動のモチーフが、いつの間にか違うものにゆっくりと変容していくのです。
まさに時間をかけてワインが熟成していくように、じぶんの書いた詩もあらゆる環境によって晒され、包まれ、マイルドに落ち着いていくと、
思いもよらなかった味や香りになってきます。
それはわたしを驚かせ、新しい感動と発見の喜びをもたらしてくれます。

春の嵐…、この歌は、今、わたしにとって、目の前の生まれたばかりの生命そのもの。
抱けばやわらかくて、笑い声が絶えなくて、生まれたばかりの葉っぱのように腕の中で身をくねらせる。
あなたを目にするたびにわたしは洗われ、一瞬にして生まれ変わったような気持ちになる。
前にもどこかで出会ったような懐かしさと、前にもどこかかで別れてしまったような切なさと。
大切な、大切な生命だからこそ、わたしのこころにはいつも小さな嵐が吹き荒れて。
でもすぐにその嵐も、色鮮やかな美しい光へと、お互いの微笑みへと変わってゆく。 
いつか、あなたともお別れするときが来るでしょう。
だから今は、今のうちは、こうして静かに微笑んでいましょう。
気持ちの良い風に吹かれていましょう。
ね、いいでしょう。